連載コラム『製造現場でのスマートデバイス活用』

第1回 携帯できるということ

2016.7.22

身近になったスマートデバイス

一般には既に多くの人が手にしているスマートデバイス(以降からは「スマデバ」)、法人利用においても約3割を超え、3年後には50%を超える見通しとも言われています。製造業の現場においても既に導入している、または具体的に導入を検討されている企業も多いのではないでしょうか。
法人利用も本格的になってきたスマデバの主なメリットとしては、以下のような点があげられます。

スマデバの主なメリット

・ユーザも慣れ親しんだ、直感的で簡単な操作。
・携帯性に優れている。
・デバイスの価格が安価(壊れたら買替える)。
・高品質な写真や動画を撮影できる。

本連載では、特に「携帯性に優れた」という点にフォーカスを当てて、以下の3回に分けて、製造現場での活用について紹介していきます。

第1回:「携帯できるということ」
第2回:「技術支援でも大活躍」
第3回:「IoT導入!まずはスマデバから!!」

ぜひ参考にして頂ければと思います。

らくらく計画変更

筆者は、製造業さま向けのパッケージ開発/販売/導入に携わっている立場上、様々な製造現場の声をお聞きします。その中で、工程管理でよくお聞きする課題の1つに、紙での作業指示運用をペーパーレス化したいとの声があります。
紙で運用している場合の問題点は、特急品が入った場合の急な計画変更です。工場内にすでに配布されている作業指示書をすべて回収して、新しいものに置き換えていく必要があります。これでは計画変更に迅速に対応できません。
また、システム化して運用している所でも、1台のPCクライアントを1つの班(7~8名)でシェアしながら運用しているという状況を聞きます。この場合、作業指示を確認するには、一度、自分の作業場を離れて最寄りのPCまで足を運び、また作業場に戻らないといけません。日々、インダストリアル・エンジニアリングを意識して作業動作の改善に努めていても、これでは効果が半減してしまいます。

そこで、注目したいのがiPod Touchなどの小型のスマデバです。iPod Touchは音楽を聴くためのデバイスですが、2~3万円程度のコストで、携帯電話機能、GPSを除けばiPhoneと同等の機能を持っているため、昨今、ビジネスシーンでも利用されてきています。また、デバイスにとって過酷な環境(粉塵、水、衝撃など)もある製造現場では、耐久性も求められますが、2~3万円というコストから、「壊れれば買い替えれば良い」という発想で現場に採用されております。
このような小型のスマデバを、アームバンドなどを利用してウェアラブル端末のように活用することにより、作業指示を手元で素早く確認することが可能となります。
以下の画面イメージは、各作業者に割り当てられた作業指示を表しています。作業者は、グリッド上に表示された作業指示を、上から順に進めて行くことになります。
特急品が入って急な計画変更が入った場合でも、手元の画面ですぐに計画変更後の作業指示を確認できます。

スマデバ上での作業指示画面のイメージ(ecoLLabo MES

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らくらく実績収集

スマデバを活用すれば、手元で作業指示を確認するだけでなく、もちろん作業実績も手元で直感的かつ簡単な操作で報告することが可能です。
これにより、直接作業の実績だけでなく、間接作業(メンテナンス、会議、5S活動など)の実績も手元での数タップの操作で登録することができます。

以下は、実績報告の画面イメージです。作業の「開始」、「中断」、「完了」を数タップ操作することにより、報告完了することができます。
これにより、リアルタイムでの進捗把握も可能となります。

スマデバ上での作業実績登録操作(ecoLLabo MES

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また、スマデバにはカメラが標準搭載されていますので以下のイメージのように、不良報告の際に不良部分の写真や動画を一緒に添付して工場全体で情報共有することが可能となります。
管理者の方は、現場からの不良速報を確認し、添付ファイルにより具体的にどのような不良が起きたか把握することが可能となります。
カメラデバイスを利用して不良画像をアップロード(ecoLLabo MES

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蓄積した静止画、動画などの画像データは、後の分析にも活用できるかもしれません。

気になったらすぐに確認

作業指示、実績報告、不良報告のデータを現場からリアルタイムで吸い上げることにより、様々な情報の見える化を行うことができます。また、スマデバにより、気になった時にすぐに見たいデータを確認することが可能となります。
例えば、常に監視しておきたいデータをグラフ化し、以下のイメージにあるようにダッシュボードとして表示させることが可能です。以下の画面イメージの上部グラフは、直近3ヶ月間の間接作業時間を集計し、積上げ棒グラフとして表示した例です。これにより工場内の作業員が間接作業としてどれくらいの時間を割いているのか一目で確認することができます。

下部グラフは、工場全体の稼働率を表しています。(もちろん部署別、班別、個別でも把握可能)これによりリアルタイムでの稼働率を把握することができます。

スマデバ版のダッシュボード画面のイメージ(ecoLLabo MES

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他にも「不良速報」、「納期逼迫オーダー」など重要なアラート情報を、工場内を移動している時や外出先でも気になった時に、すぐに確認することもできます。
また、ある閾値を超えればメール送信を行い、音やバイブレーションにより通知する仕組みを組み込むことも可能でしょう。

内線端末としても

またスマデバを会社の内線端末に活用するといった企業も出てきております。
以下のイメージのように「IP-PBX」の仕組みを導入すれば、「社内→社内」の通話は、社内無線LANの通信網を利用して通話料ゼロの内線網を構築できます。
「社内→社外」の連絡においても、LTE/3Gネットワーク網を利用することにより、外出先で社内からの連絡を受けた際も内線として通話することが可能です。
また、「社内→他社」へ発信する際も、携帯電話発信ではなく会社の固定電話発信となるため、通話料も大幅に削減することができます。

IP-PBXの導入イメージ

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デバイスについては、スマートフォンでなくとも、iPod Touchの第4世代以降であれば、ヘッドセットなしで内線電話として利用することができます。
(但し、LTE/3Gネットワークは、利用できません。)
つまり、2~3万円程度のデバイスで、作業指示、実績報告用のクライアントだけでなく、内線機としても利用可能となります。
今回、ご紹介したのは、まだまだスマデバの活用例の一部です。
次回は、製造業の重要課題の1つである「技術支援」にフォーカスを当てて、スマデバをいかに活用できるかをご紹介いたします。