連載コラム『データ分析』

第5回 ビジネス事例紹介②

2016.08.31

データ分析、第5回目です。
前回に引き続きビジネスとデータ分析の接点をご紹介します。

ユーザーベース協調フィルタリング

これまでにショッピングサイトを利用したことのある人の購入履歴を元にユーザのグループ分けを行っておく手法です。
“食べ物をよく買う人”、“本をよく買う人”などというようにユーザの趣向を幾つかのグループにしておき、商品を買った人やサイトに訪問した人に対して、その時見ている商品からどのグループに属するかを判定します。
その結果からそのグループで人気があるものを提案する、という考え方です。

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アイテムベース協調フィルタリング

ユーザ単位ではなくアイテム単位で考える手法です。
同時に買われる商品に着目することでアイテム同士の類似性を決めておくのがこのアイテムベース協調フィルタリングです。
ユーザが新たに何かを買った際に、類似性の高いものを提案することで興味のある(と思われる)関連商品を提案することができます。

実際のショッピングサイトでは他にも様々なレコメンド手法を組み合わせてユーザ満足度の高いものを作っています。

前回ご紹介した映画のDVD→主演俳優の音楽CDというのもこの図式にあてはまります。
購入履歴をアイテムベースで分析したところ「とある映画のDVDととあるバンドの音楽CDに強い関連がある」ということに気付きました。
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映画好きなだけでもない、音楽好きなだけでもない、いったいこの関連はなんなのだということで映画と音楽の内容を確認したところ「映画にはある俳優が出演しているし、音楽はその俳優が昔いたバンドのものである」という類似性が浮かび上がってきました。
ということは、これらをあわせて買っているグループは「俳優THのファン達」というユーザーベースの位置づけができそうです。
さらに分析を進めて、このグループに属しているのは主婦層が多いとなれば、「主婦には俳優THは大人気」という仮説が生まれて、主婦がアクセスした時にはとりあえず俳優THの代表作をレコメンドしてみる、というところにまで発展させることができます。
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レコメンドの活用事例

このようなレコメンドのシステムは今やショッピングサイトだけでなく、様々なシステムに取り入れられ始めています。いくつか例を見てみましょう。

DM最適化
Webで買い物をしたときだけでなく、ダイレクトメールによる宣伝にも活用されています。対象となる個人がどのような嗜好があるか人工知能を使って学習し、レコメンドの仕組みを使ってどのようなダイレクトメールの送付を行うか決定している例もあります。

ニュース配信・イベント告知
個人に対して興味があると思われるニュースやイベント情報を通知する、といった事例もあります。ユーザの閲覧履歴や行動特性を元にレコメンデーションを行います。
特に近年では個人が得られる情報が爆発的に増えていますので、このような自動的に必要な情報をピックアップしてくれるサービスを利用している方も多いと思います。このようなところにも分析技術が活用されています。

入力補完
今となっては当然のように使われている入力補完も、いわばレコメンドの一種といえます。
途中まで文字を打ち込んだ際に候補を提示したり、関連キーワードを表示したりする仕組みです。
このような入力補完の仕組みを様々な企業webサイトに導入する、というビジネスも生まれています。

このように、IT技術を使ったサービスはレコメンドの技術を活用することで「誰でも分け隔てなく利用できるサービス」から「個人に合わせたより細かなサービス」へと急速に発展しています。
データ分析もより良いサービスを創り出すために必要な技術ですね。

次回は、実際にテーマを決めて簡単なデータ分析を実践してみたいと思います。
実際にどんな作業を行っているか、というところがお伝えできればと思います。

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