連載コラム『製造現場でのスマートデバイス活用』

第3回 IoT導入!まずはスマデバから!

2016.8.19

連載3回目は、最近話題の「IoT」にフォーカスを当てて、スマデバをいかに活用できるかをご紹介いたします。
(この記事の最後でバックナンバーをご紹介しています。)

スマデバはセンサの塊

GPSセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、方位センサ、照度センサ、集音センサ(マイク)など、スマデバには様々なセンサが標準で搭載されています。そして今後も、多くのセンサを標準搭載することだろうと予測しています。
また、LTE/3G、Wi-Fiのネットワーク網を利用できるスマートフォンであれば、IoTゲートウェイとしても活用できます。例えば、内蔵されているセンサの情報を、クラウド上のサーバーに送信することも可能ですし、Bluetoothなどの近距離通信のセンサの情報を、ゲートウェイとなってクラウド上のサーバーに送信することにも利用できます。まさに万能IoTデバイスです。

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IoTが騒がれる中、一番身近なこの万能IoTデバイスを製造現場で活かさない手はありません。そこで、いくつかの活用例を挙げてみました。

知らぬ間に動線分析

製造現場において、工場の建屋内などGPSが利用できない作業場は少なくありません。そこで、注目されているのが屋内位置測位の技術です。
屋内位置測位に関しては、様々な技術が日々研究されており、各々特性をもっております。そこで、下表に、各技術の特性をまとめてみました。

屋内位置測位の技術一覧
技術 測位方法の概要 特性
Wi-Fi 無線LANアクセスポイントからの電波強度、到達時間から位置測位を行う。
  • 既存の無線LANアクセスポイントを活用できる。
  • 他の電波の干渉、壁や設置物などによる反射・吸収などの影響を受けやすい。
BLE
(Bluetooth Low Energy)
Bluetooth発信装置(ビーコン)からの電波を使って位置測位を行う。
  • 超音波方式より精度が高い。(数cm~数十cmレベル)
  • 壁を通過する。
  • 省電力である。
  • 発信機に近接した時にバックグラウンドのアプリを励起できる。
  • 干渉の恐れがあるデバイスがある。
    • 電子レンジ(2.45GHzを中心波数とする。)
    • Wi-Fi(2.4GHz 802.11b/g/n 3-5ch, 13-14ch)
    • デジタルコードレス電話(2.4GHz帯)
    • 水を多く含む物体(2.4GHz帯は水に吸収されやすい)人間も水を多く含むので、ビーコンを天井など高い所に配置する必要がある。
PDR
(歩行者自律航法)
加速度、ジャイロなどのセンサを使い移動方向と速度を推測し、位置測位を行う。
  • 基準点からの測位なので、各センサの誤差が蓄積することにより、大きく誤差が生じる場合がある。
IMES 専用機器からGPSと同等の信号を発信して位置測位を行う。
  • 発信機の設置・運用についてはJAXAへの届け出が必要。
  • IMES対応受信チップを搭載したスマホでなければ専用受信機を別途用意する必要がある。
超音波 人間の耳に聞こえない周波数の音波を利用して位置測位を行う。
  • 従来のスピーカとマイクで、超音波 (周波数 20kHz前後)の送信および受信ができるため、現在のスマホの殆どが利用できる。
  • 壁を通過しない。

現段階で、最も注目されているのは、BLEを使った屋内位置測位技術です。iOSではiBeacon、AndroidではEddystoneが該当する技術です。

例えば、第1回の記事にあげたように「作業指示確認」、「実績報告」のクライアント端末としてスマデバを利用していれば、作業者が常にスマデバを持ち歩くことになるので、同時に作業者の動線情報も蓄積することが可能となります。この動線情報をもとに、工場内の設備レイアウトの改善に繋げることが可能です。まさに一石二鳥ではないでしょうか。

動線取得のイメージ
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また、ワーク(加工対象物)にビーコンを貼り付けて、ビーコン受信機を建屋内に配置すれば、ワークの動線情報も取得することができます。この情報をもとにワークの滞留時間を測定し、ヒートマップとして見える化すれば、工場内の渋滞状況を把握することが可能です。

滞留時間ヒートマップのイメージ
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近付けばその設備の情報が

工場の設備にビーコンをセットしておけば、スマデバを手にその設備に近づくと、その設備のスペックの情報を画面に表示したり、前回の点検情報を表示したりすることも可能です。
これによりほかの設備の情報と間違えることなく、点検作業を行うことができます。
また、その設備での作業指示も近づくだけで表示させることもできますので、「作業指示確認」、「実績報告」の際の設備選択操作を省略させることも可能となり、作業効率もアップしそうです。

熱中症予防にも

製造業の現場には、「屋外での作業」や「高温室での作業」、「空調のない建屋での作業」など、高温下での作業場も少なくないと思います。
現場の監督者としては、作業者の健康状態にも気を配らないといけないことだろうと思います。
そこでバイタルセンサを使って以下のイメージのように、本人でも自覚していない熱中症の予兆をキャッチして休憩指示をだすなど早めの対策が可能となります。

バイタルセンサの情報で熱中症の予兆をキャッチ
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おわりに

連載3回に渡りまして、製造業においてスマートデバイスをどう活用できるかといった紹介をさせていただきました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
昨今、製造業においてもIoTが大変話題となっておりますが、IoT導入のファーストステップは、一番身近なスマデバの活用から考えてみてはいかがでしょうか。
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